外国人介護福祉士は、いったい何に困っているのか(3)

学習面:外国人介護福祉士に必要な学習とは

外国人介護福祉士は、いったい何に困っているのか、ということを取り上げていますが、前回までに、生活面仕事面の話をしてきました。では、学習面ではどうなのか。今回は学習面についてあげていきます。

学習の場面では、次のようなことに困ります。

  • 基本的な日本語力(語彙、文法、四技能の力)
  • 漢字
  • 介護の専門語彙
  • 専門知識
  • 読解力(速読力)
  • 文体(話しことばと書きことば:です・ます/だ・である)
  • 日本社会の理解

まず、「基本的な日本語力」についてですが、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるN3レベル程度は必要です。なぜなら、何といっても介護職は対人コミュニケーションを必要としているからです。

日本語の基礎力が足りないと、人とコミュニケーションを取らなくてもできるような単純な作業しかできなくなります。でも、それでは介護の仕事の、ごく一部しかできないことになってしまいます。日本語力が高いに越したことはありませんが、N1、N2レベルの日本語がなくても介護現場でのコミュニケーションはある程度できます。レベルを高く設定せず、N3までの語彙と基本文型をしっかり勉強しよう!と、区切ってあげることも大切です。

そして、「漢字」問題です。これはなかなか頭の痛い問題です。

出身国が非漢字圏である方が多く、苦手意識を持つ方も多くいます。このとき、まずは「読み」と「意味」を優先させましょう。漢字学習というと「書く」ことも同時に考えてしまいますが、記録物などを記入するようになるのは、次のステップと考えます。とりあえず「読み」と「意味」を優先させることで介護職を目指す外国人の負担を減らしたいものです。「漢字」に嫌悪感を抱いてしまうと、専門書を読み進める勉強は地獄でしかなくなります。漢字の学習は日本語教育の初期教育が大事だと思いますが、漢字に興味を持ってもらうよう、楽しく、モチベーションをあげる工夫をしたいものです。漢字の意味を知り、現場でよく使う語彙につなげるなど、現場をより意識させてみるといいです。

さらに介護の専門語彙です。

みなさん、次の介護の専門語彙が読めますか。意味が分かりますか?

  1. 褥瘡
  2. 含嗽
  3. 咀嚼
  4. 吃逆

  1. 褥瘡(じょくそう):床ずれ
  2. 含嗽(がんそう):うがい
  3. 咀嚼(そしゃく):かむ・噛みくだく
  4. 吃逆(きつぎゃく):しゃっくり

日本人だって、読むのが大変、意味が分からない、という難解な専門語彙。外国人にとっては、それはそれは難しいものです。床ずれ、うがい、かむ、しゃっくりという日常使う言葉を覚えた上での専門語彙。頭が痛くなるのも分かりますよね。

その上で、なぜ「読解力(速読力)」なのか?それは、国家試験の問題を解くにあたっては、読解力とともに、速読力が必要となるからです。短い時間で正確に読み解く技術を身に付けなければなりません。ポイント、キーワードをつかむ方策を身につけてもらいたいものです。

さて、ここまで、生活面仕事面、学習面について紹介してきました。

これらを踏まえて、次回は、外国人介護福祉士に必要な学習領域と項目についてまとめたいと思います。


介護の日本語123

日本語教師のグループ。専門は日本語教育学。EPA介護福祉士候補者と留学生への介護の日本語教育を行う。「介護の日本語」という専門日本語教育の必要性から介護施設の協力を得ながら、その学習項目・指導法・カリキュラムを構築し、現場重視の実践的な教育を研究している。