外国人介護福祉士は、いったい何に困っているのか(2)

仕事面:外国人介護福祉士に必要な学習とは

前の記事「生活面:外国人介護福祉士に必要な学習とは」では、介護職を目指す外国人が困ることとして、生活面の話をしました。では、仕事面ではどうでしょうか?

就労の場面では、例えば次のようなことに困ります。

  • 話しことば:申し送り、職員・利用者(要介護者)・利用者の家族との会話
  • 書きことば:記録、施設内の掲示物・職員とのメール連絡など
  • 職員、利用者(要介護者)、家族とのコミュニケーション
  • 専門語彙と実際の現場での表現の違い
  • 日常業務で必要なことば:オノマトペ、衣類のことば、色のことばなど
  • 日常業務で必要な知識:専門知識、利用者(要介護者)との会話で必要な一般知識など
  • 日本語の難しさ(発音,方言、待遇表現など)            

介護は、やはり対人コミュニケーションが主な仕事なので、それにまつわる業務が挙がります。

まずは、「話しことばと書きことば」の違いに、戸惑います。

話しことばは、日常の会話でも、相手が職員か、利用者(要介護者)か、利用者の家族かで、話し方や敬意表現(敬語)、使う語彙なども違ってきます。

例えば

小林さんに嗄声がみられます

小林さんはどんな状態がわかりますか?この表現、職員ならわかるでしょう。でも、利用者の家族には伝わるでしょうか?きっと

小林さんはかすれ声になっています

なら、わかりますよね。

また、「申し送り」と「記録」は、仕事内容や利用者(要介護者)の状況を知るために欠かせない業務ですが、同じ内容でも、話すとき(申し送り)と、書くとき(記録)で、文体や使用語彙・表現が違うことも日本語を母語としない人にとっては難しいのです。

そもそも、たくさんの利用者(要介護者)の申し送りや記録からすべてを把握するというのは、介護職を目指す外国人にとって(時には日本人にとっても!)、大変な作業です。

ただ、それぞれの流れ(型)や、よく使われている表現を知る手助けをすることで、大きな助けになります。

記録でいえば、例えば施設で使用する介護記録には、どのような項目があるのか、どう記入したらいいのかを、先に確認しておくと、記録表を読みやすくなります。


日常業務で必要なことばとして「色のことば」も挙げました。色のことばというと、一見単純そうですが、これがけっこう大変なんです。これまでの日本語学習で覚えた「紫」の色は、利用者(高齢者)の発言では、あずき色、ふじ色、すみれ色、等々、いろいろな表現の仕方があるんです。難しいですよね。らくだ色、あかね色、よもぎ色・・・ですよ。えっ、何色?と聞きたくなりますよね。

さて、今回はこれまで。

次は、生活面、仕事面に引き続き、学習面では何に困るのか?のお話をしたいと思います。


介護の日本語123

日本語教師のグループ。専門は日本語教育学。EPA介護福祉士候補者と留学生への介護の日本語教育を行う。「介護の日本語」という専門日本語教育の必要性から介護施設の協力を得ながら、その学習項目・指導法・カリキュラムを構築し、現場重視の実践的な教育を研究している。