学習計画を考える(1)

学習計画を立てる前に

介護現場に携わる外国人に必要な学習については、本ブログでもいくつかの記事で言及されています。すでに支援にかかわっている方は「そうそう」と思いながら記事を読んでくださったかもしれません。

本シリーズのテーマは「学習計画」です。その1回目は、学習についてちょっと大きな視点で見てみよう、というものです。

介護の現場で働く外国人の方々は、いくつかの在留資格をもって日本で仕事をしています。そのため、

  • いつ日本に来て何年日本に住んでいるのか
  • 何年介護の現場で働いているのか
  • 何年日本語を学習しているのか
  • 職場で日本語学習支援を受けられているのか

など、個人によって立場や状況が異なります。

学習支援を行う場合、その人にはどのような支援が適しているのかを考える必要があります。ただ、これを個別で考えると、それこそ人数分の学習計画を立てる必要が出てきますので、ちょっと大変です。個別の詳細な計画の前に、まずは大まかな学習目標について考えてみましょう。


専門学校等を介さずに「介護福祉士」の資格を取るためには、受験資格として介護の現場で3年の経験を積む必要がある、ということはすでにご存じかと思います。そこで、この仕事を始めてから「3年」という期間を設定して、まずは考えてみましょう。

想像してみてください。もしみなさんが海外に出て、そこで働くことになった場合、周りはみんな「外国人」です。その国のことばや仕事について簡単な勉強はしてきたけれど、教科書の学習だけでは実際のコミュニケーションにつなげるにはなかなか難しく、挨拶はできるけど、まわりが何を言っているのかあまりよくわからない…。同僚には先に働いている「日本人」もいるけれども、いつも一緒に仕事をしているわけではないので、すぐ頼るわけにもいかない…。

どんな気持ちになりますか?そう、とても不安になりますよね。その不安を少しでも解消するためには、情報収集や周囲とのコミュニケーションが欠かせません。そのためにも、やはり「ことば」というものはとても大切なのです。

介護現場で働く「海外から来た人たち」が、日本での生活のために必要な学習内容については、以下の記事の中でもいくつか例が挙げられています。

生活面:外国人介護福祉士に必要な学習とは | 外国人介護福祉士は、いったい何に困っているのか(1)

日本の介護の現場という、新しい環境のもとで仕事を始めた1年目。生活も大変ですが、やはり仕事に早く慣れたいと思いますよね。新しいことばかりで頭の中がパンパンになってしまい、とにかく毎日必死で早く仕事を覚えなきゃ!となっているかもしれません。

生活にも仕事にも慣れ始めた2年目は、職場でのスキルアップも考えるかもしれません。スキルアップのために新しい情報や知識が必要になります。または少し余裕が出てきて旅行に行ったり、地域の活動に積極的に参加したりするようになるかもしれません。

さらに3年目ですが、この時期は今後本人自身がどうしたいかが、大きなカギになります。介護福祉士国家試験の受験資格を満たすまで、あと少しです。国家試験を目指す場合は、この3年目でしっかりと対策をすることが望まれます。

このように3年という大きな期間で、自身がどのような状況や環境下にあるかを考えることは、その時に適した学習計画を立てるためにもとても重要です。毎日の仕事をしながら「日本語学習」や、必要に応じてそこに「国家試験対策」を組み込んでいかなければならないのですから、仕事にも役立つと実感できるような学習計画がいいですよね。

次回からは、まずは「3年」という期間でどのような学習を進められるか、具体的な例を出しながらお伝えできればと思います。


さいとう

専門は日本語教育学。国内、海外の様々な現場で日本語教育に従事。2008年のEPA介護福祉士候補者第1期生以降、外国人介護従事者の支援に関わる。コースデザイン、教材開発ほか、教師研修にも携わる。最近の関心ごとは「市民リテラシー」と多文化共生。