EPA候補者の学習教材ガイド(2)

『介護の言葉と漢字 ハンドブック』を使った語彙の学習方法

前回の記事「配属1年目のEPA候補者の学習教材」では、EPA介護候補者(以下、候補者)1年目の学習に使う教材をご紹介しました。本記事では、その中の『介護の言葉と漢字ハンドブック』(以下、『ハンドブック』)を使った、語彙の学習方法の実践例をご紹介します。

私たちは『ハンドブック』の補助教材として「例文ノート」という紙教材を作成し、使っています。これは、『ハンドブック』で扱われている語彙のうち、学習者が実務の中で触れる機会が特に多いと思われる語彙の定着を狙った教材です。

以下、それを活用した授業の流れと、指導のポイントを紹介します。

授業前

予習

次回の授業で学習する『ハンドブック』の範囲を候補者に知らせ、漢字の音読み・訓読み、意味、熟語の意味を確認しておいてもらいます。

指導者の準備

『ハンドブック』に対応した内容の「例文ノート」を準備します。




授業

予習の確認

『ハンドブック』で予習をしてもらった漢字の音読み・訓読み、意味を候補者に確認します。熟語の意味を簡単な日本語で説明してもらいます。

指導のポイント:

それが専門的な語彙であっても、候補者に自分のわかる日本語を使って説明をしてもらうことで、その人の理解度がわかります。あわせて発音も練習しましょう。

ことばの使い方を知る

例文ノートを見て「a. 単元名」「c. 学習語彙」「d. 語彙の共起表現」を確認し「e. 例文の意味や使う場面」を確認します。

「d. 語彙の共起表現」の「共起」というのは、組み合わせて使われることが多い語彙と語彙のつながりのことです。例えば、「風邪をひく」(「風邪になる」は使わない)「寝返りを打つ」(「寝返りをする」は使わない)というものがあります。この言葉のつながりがわからないと、口頭での話や記録文などや、試験対策のテキストの文の意味が理解できない場合があります。

文を作る

候補者に「f. 短文作成」を口頭でしてもらい確認をします。その際、「d. 語彙の共起表現」や、その語彙の使用場面を意識した文を考えるようにするといいです。例文ノートに記入するのは宿題にしてもいいでしょう。

指導のポイント:

候補者のみなさんが、自身の経験を生かして介護現場に沿った文を作ったら、「それは今後、記録を書く際や申し送りや報告などで使えますよ」と伝えると、より学習に力が入ることでしょう。

授業後

小テスト

後日、共起表現に重きを置いたテストを実施して、定着を確認します。

例文ノートの作成が大変では?

例文ノートを作成するのは大変な場合もあると思います。その場合は、口頭での短文作成をしっかり行ってください。現場での使用場面を想定したうえで、学習した語彙を使い、日本語で文を作れるようになれば、その後の業務場面でも生かせます。

指導者が日本語教師ではない場合は?

候補者を指導するのが日本語教師ではない、という場合も少なくないかと思います。介護現場を熟知した介護職員の方が指導にあたる場合には、語彙の使用場面がイメージできるように、その語彙をいつ、どのように使うのかをアドバイスをしてあげてください。

この学習がどんなところで役立つ?

語彙を知ること、わかること、そして使えることは、仕事でも学習でも欠かせないものです。例えば、以下のようなことがしやすくなります。

仕事面では

  • 現場で聞く表現、申し送りが聞きやすくなります。
  • 記録物や掲示物の文章が読みやすくなります。
  • いずれ、申し送りや報告、記録物の記載をする際にも役立ちます。

学習面では

  • 介護の専門語彙の学習方法を身に付けることで、自律学習がしやすくなります。
  • 介護福祉士国家試験に向けての学習テキストが理解しやすくなります。

介護の日本語123

日本語教師のグループ。専門は日本語教育学。EPA介護福祉士候補者と留学生への介護の日本語教育を行う。「介護の日本語」という専門日本語教育の必要性から介護施設の協力を得ながら、その学習項目・指導法・カリキュラムを構築し、現場重視の実践的な教育を研究している。