介護分野で働く外国人のための学習教材ガイド(1)

『はじめて学ぶ介護の日本語 基本のことば』の紹介

「介護のことば」って?難しいの?

「介護の言葉が難しい」――これは外国人介護人材、また彼らの支援者からよく聞かれるフレーズです。

みなさん、次に挙げる言葉がわかりますか?

「含嗽」 

読み方は何ですか?どんな意味でしょうか?

正解は「がんそう」と読みます。意味は「うがい」です。うがいなら簡単、誰でもわかりますよね。介護現場でも利用者さんに対しては、「うがい」と言います。施設や場面によっては「がらがらぺー」や「ぐちゅぐちゅぺー」ということもあるそうです。特にオノマトペは、施設等により使用についてのお考えがあると思いますので、学習者は自分の勤務先に確認する必要があります。

つまり、介護に携わる人々は、日常語としての「うがい」はもちろんのこと、場面に応じての言い換え語である「がらがらぺー」、また、業務や学習の際には専門用語としての「含嗽」もすべて知っていなければなりません。勉強は大変ですよね。

本記事の執筆者である私たちは、EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者や、介護の職に就くことを目指す留学生に指導を行ってきた現役の日本語教師です。

この記事では、言葉を勉強するために役に立つテキストとして、私たちの著書、『はじめて学ぶ介護の日本語 基本のことば』を紹介します。

どんなテキストなのか


『はじめて学ぶ介護の日本語 基本のことば』は、2017年にスリーエーネットワークから出版されました。

著者は2008年のEPAが始まった当初から日本語支援、研究を続けていたり、将来、介護の職に就くことを目指す留学生に指導を行っていたりする、現役の日本語教師4名です。

  • 語彙数:1,500文字(介護現場や介護福祉士国家試験で使用頻度・重要度の高いことば)
  • 対象者:日本で介護関係の仕事に就くことを目指しているひと。すでに現場で働いているひと。
  • 翻訳:英語・中国語・ベトナム語・インドネシア語

目次

  • Part1:施設のことば
  • Part2:体・体調のことば
  • Part3:介護のことば
  • Part4:制度のことば
  • Part5:まとめの問題

介護の現場を知らない人でもイメージを積み重ねていけるように、まずは「施設のことば」からスタートしています。既に働いている人は自分の必要なところから始めてもいいですし、これから勉強する人は、Part1から順番に勉強していけば、無理なく介護の現場のイメージができると思います。

テキストには工夫がいっぱい!

このテキストを使ってできることは3つあります。

  1. 介護のことばが読めて、意味がわかる
  2. ことばと例文を読めば介護の全体をイメージすることができる
  3. 介護の場面での使用が意識できる

以下、もう少し詳しく、ページを見ながら特長を確認しましょう。


ことば

同じ意味のことばはまとめて紹介されています。一般的な表現のあとに専門用語や、主に話しことばで使う表現などがあります。先ほど挙げた、「うがい」「含嗽」「がらがらペー」のように、意味は同じでも使用する場面が違うことがわかるようにしています。

読み方

読み方は赤字で書かれています。赤シートが付いていますので、正しく読めるかどうか確認ができます。

翻訳

4か国語で翻訳があり、同じ意味のことばには詳しい違いではなく、共通の翻訳がついています。現場や学習の面で使われる様々な表現をすぐに理解するためです。

共起

共起というのは、よく組み合わせて使う語彙と語彙のつながりのことです。ここを見れば、ことばを使うときの助けになります。

例文

介護現場でよく使われる例文があります。ここを読むことで、介護現場でのイメージを持つことができるでしょう。

イラスト

イラストが豊富に使われています。イラストを見れば、ことばについて理解しやすいですね。

このようにこのテキストは、「難しい」と言われがちな介護の日本語を学習するときの手助けになる工夫がたくさんされています。少しでも楽しく、負担なくことばについて勉強できるといいですね!

出版社のサイトにある教材の紹介ページでは、より詳しい使い方、授業で使えるパワーポイントや授業例の動画もありますので、ぜひご覧ください。


介護の日本語123

日本語教師のグループ。専門は日本語教育学。EPA介護福祉士候補者と留学生への介護の日本語教育を行う。「介護の日本語」という専門日本語教育の必要性から介護施設の協力を得ながら、その学習項目・指導法・カリキュラムを構築し、現場重視の実践的な教育を研究している。