学習計画を考える(2)

まずは学習環境の確認から

前回の記事では、介護現場に携わる外国人の学習計画を立てる前に、3年という期間をまずは捉えてみよう、とお話ししました。では、その3年では、具体的にどんな学習が必要になるのでしょうか。

たとえば、職場に入って1年目は、入職前に基本的な日本語は学んだけれど、介護現場の日本語にはまだ慣れていません。ですから、仕事に必要なことばや同僚や利用者さんとのコミュニケーションでよく使われる表現をしっかり覚える必要があります。また、一人でも学習できるような学習習慣を身に着けていくことも重要です。

2年目は、職場で使われる専門的なことばの理解や、介護記録のための読み書きなどが含まれるでしょう。仕事だけでなく、日常生活でも日本語の広がりがほしいところですね。

3年目は、その後の目的によって異なりますが、国家試験を目指す場合その試験対策として、試験のスタイルに慣れていく必要があります。日本の介護について、より深く学んでいく時期といっていいでしょう。

これらの状況を例に学習目標を整理すると、以下のようになります。



  行動面の目標 能力面の目標(Can-do)
1年目 仕事に慣れる
自律学習の習慣を養う
聞いて理解できる・行動できる
2年目 仕事と生活の環境を見直す
地域との交流
人と対話ができる・交流できる
3年目 A. 介護福祉士国家試験受験対策
B. より介護の知識と経験を深める
自分の考えによって行動できる

では、これらの目標のためにどのような学習計画を立てたらいいのでしょうか?

前回もお話ししましたが、介護の現場に来る外国人の方の在留資格は様々です。そして、入国前、入国後の日本語学習経験も、それぞれの受入れスキームや本人の経歴によっても異なります。就業開始後の環境も関係してきます。すでにN3をもっているのか、パソコンやタブレット、スマートフォンを持っているのか、日本語指導員がいるのか、施設の関係者の方の協力が得られるのかなどなど、考えることがたくさんありますね。

このように、学習を進めるための関連要因はとても多いのです。学習者の立場になってどのように学習を進めていけるか考える必要があります。

ここで少し情報を整理してみましょう。適切な支援をすすめていくために、学習環境について確認します。下のフローチャートを使ってみましょう。


いかがでしたか?

この環境確認は、まず「日本語を指導してくれる人がいるかどうか」を軸に分岐しています。日本語指導をしてくれる人がいない場合、学習者自身が中心となって学習を進めなければなりません。

その際、オンライン学習ツールが利用できるかどうかが大きなカギとなります。施設との協働がどの程度可能なのかによっても、適した学習支援方法や教材、ツールなどが異なってきますね。1から4は、学習環境ごとにそれぞれの支援ポイントを示したものです。

次回からは、1年目~3年目の期間で、それぞれの環境に合った学習支援ポイントについて、教材例を出しながらお伝えしたいと思います。


さいとう

専門は日本語教育学。国内、海外の様々な現場で日本語教育に従事。2008年のEPA介護福祉士候補者第1期生以降、外国人介護従事者の支援に関わる。コースデザイン、教材開発ほか、教師研修にも携わる。最近の関心ごとは「市民リテラシー」と多文化共生。