外国人介護福祉士は、いったい何に困っているのか(1)

生活面:外国人介護福祉士に必要な学習とは

介護職に携わる外国人の方が増えています。例えば、日本での生活が長い定住者の方、介護職を目指す留学生の方、介護分野での在留資格を得て来日する方など…。

その方々が、たとえ日本語が堪能でも、介護現場で働くときに、困ることや大変なことがあります。それは何だと思いますか?


日本で働く場合には、「生活」をしながら「仕事」をし、同時に「学習」もしていかなければなりませんよね。そこで

  • 生活面
  • 仕事面
  • 学習面

に分けて、具体的に何に困っているのか、見ていきましょう。


来日して日が浅い方の場合、まず日本の生活・文化・習慣的なことにつまづくのはすぐに想像ができますよね?でも、日本生活に慣れた人であっても、日本について改めて理解しておきべきこともあるのです。例えば、次のようなことです。

  • 日本の社会について:少子高齢化の背景、日本の家族構成、役所や銀行の手続きなど
  • ルールやマナー:ごみの分別、住居、近隣の環境など
  • 人との関わり方:パーソナルスペース、人への触れ方など
  • 宗教に対する理解:外国人介護福祉士が信仰する宗教への理解と対応(お祈り、断食、食生活など)
  • 一般的な知識や情報:日本の季節、年中行事、日本の食事(介護食)、人気のあるスポーツや趣味、日本の歌、など

上記は、生活場面での問題・課題としていますが、同時に就労場面においても、これらのことを知っておくことで利用者との会話につながる項目です。

「日本の社会について」や「ルールやマナー」は、日本社会の現状や、生活するうえで必要な知識です。どうして日本では介護職が必要なのか?、日本に住むにあたっての多くの手続きの方法や銀行の開設について、日々のごみ処理の方法などは、早い時期に知っておいてほしいですね。

なかでも「日本の食事」は、生活場面と就労場面で特につながりがあります。例えば、「一汁三菜」は日本独特の食事形態で、外国人は品数の多さにびっくりすることもあります。

季節の旬の食材や、年中行事で食べるものを知ると、食生活が楽しくなりますよね。それが食事介助のときの利用者(要介護者)とのコミュニケーションのきっかけにもなります。「今日は冬至ですから、おかずはかぼちゃの煮物ですよ。」なんて言いながら配膳したら、とても楽しい気分で食事ができそうですよね!

ここで、あわせて介護食の種類や対象者も説明しておくと、生活と仕事とのつながりへの理解につながります。


他にも、「一般的な知識や情報」として、野球や相撲などの日本で人気のスポーツや、折り紙や俳句などの趣味、そして日本の歌も、日本での生活で役に立ったり、かつ就労場面では利用者(要介護者)との話題にもなりますよ。

実際に、外国人介護福祉士からこんな話を聞いたことがあります。

ある夏の朝…
利用者(要介護者)の佐藤さん:今日も甲子園が楽しみだな~!
介護職を目指す外国人:甲子園…?(テレビを見て)なぜ学生たちの野球を一生懸命応援しているの?

「夏の風物詩といえば、甲子園(高校野球)!」という方は多いですよね!

こうしたことを事前に知っておくと、利用者(要介護者)を理解することにつながります。一方で、もし知らないことがあったら、利用者(要介護者)に質問をすることも、会話のきっかけになったり、活気がでたりしていいでしょう。

また、「宗教」に関しては、日本人(受け入れ側)も理解をした上での対応が必要になります。

では、次は、仕事面は何に困るのか?のお話をしたいと思います。


介護の日本語123

日本語教師のグループ。専門は日本語教育学。EPA介護福祉士候補者と留学生への介護の日本語教育を行う。「介護の日本語」という専門日本語教育の必要性から介護施設の協力を得ながら、その学習項目・指導法・カリキュラムを構築し、現場重視の実践的な教育を研究している。