介護福祉関連施設について知る(3)

介護施設による記録方法の違い

介護施設にはいろいろな種類がある、ということについては「『老人ホーム』を知っていますか?」で触れましたが、仮に同じ種類の介護施設であっても、各事業所の方針によって仕事のしかたに違いがあるようです。

そして、その違いが最も現れやすいのが、「記録業務」です。記録業務は、利用者の安全を守るとともに、よりよい介護を行っていくために最も大切な業務の一つであると言われています。そこで、施設による記録方法の違いについて知っておきましょう。

手書きで記入する施設

日本では多くの介護施設が、紙媒体での情報伝達を行っています。手書きでの記録には

  • すでに印刷された項目にチェックを入れるスタイル
  • 単語やキーワードを記入するスタイル
  • 文章で利用者の様子を詳しく記述するスタイル

など、いろいろなものがあります。

PCを使用する施設

記録にPCを使う施設も増えてきていますが、内容は上述した手書きのものと同じです。非漢字圏の外国人にとってPCでの入力は手書きより簡単だろう、と思われがちです。しかし、PCでの入力が「ローマ字入力」であれば、入力するローマ字を間違えると正しい単語が出て来ません。

したがって、漢字の書き取り以前に、ひらがなとカタカナの正しい読み取りができている必要があります。外国人職員は、とりわけ発音学習を強化しなければならないでしょう。


専用システムにモバイル端末を使って入力する施設

まだあまり多いとはいえませんが、業務全体をIT化している事業所も出てきています。そのような施設では、職員に一人一台のモバイル端末が支給されており、それを使って専用のシステムにチェックを入れる方法で記録を行っています。この方法が確立されれば、記録時間の短縮につながり、効率的に業務を行うことができると考えられています。

しかし、利用者一人ひとりの状態を詳しく説明することについてはまだ改良の余地があり、利用者に寄り添った介護のためには完全な方法とはいえない、という声もあります。

さまざまな情報伝達ツールがデジタル化されている今、手書きは古い、PC入力にしろ、文章を考えるのは面倒だ、といった現場の意見があるのは事実です。

しかし、ある事業所の方からは「手書きだからこそ間違いを防ぐことができるのだ」という意見を聞いたり、別の事業所の方からは「自分のことばできちんと説明できてこそよりよい介護につながるのだ」という意見を聞いたりします。

その一方で、事業所全体がIT化されている法人から、「ただでさえ人手不足なのだから、効率を重視して働きやすい職場づくりをするべきだ」という考えを聞くことも、たしかに増えてきています。どちらの方がいいということは、今のところ言えません。

したがって、介護職に就こうとする人は、これから働く施設がどのような方針のところであっても、記録業務を円滑にこなすことができるような文章構成力やPCのスキル、ITに対する理解力をつけておくことが重要なのではないかと考えています。


HONUA

日本語教師。専門は日本語教育学。留学生、定住外国人、外国人介護従事者への日本語教育を行う。これまでに、EPA介護福祉士候補者、技能実習生、定住外国人に対する介護の専門日本語のコースデザイン、教材開発、教育実践に従事してきた。