介護福祉関連施設について知る(2)

都会の施設と地方の施設の違い

老人ホームは日本全国にあります。仕事柄、さまざまな老人ホームを訪れますが、もちろん職員の仕事内容はどこもほとんど変わりありません。しかし、そこである違いに気づきました。それは、地域によって周囲の環境が違うため、職員の日常生活や学習環境が大きく異なるということです。


異なる日常生活

東京のど真ん中のような都会の施設の職員と、都会から遠く離れた地方の施設の職員では、生活様式がまったく異なるということは誰にでも想像できるでしょう。都会では、周りに商業施設がたくさんあります。また、仕事が終われば遊びに出かけていくところもたくさんあり、その利便性もさることながら、若い職員にとっては楽しい経験も多く、リフレッシュすることができ、仕事のモチベーションも保ちやすくなるかもしれません。

しかし、地方の施設の職員は、交通の便が悪く、外出もままならないため、仕事以外でいろいろな経験をすることはなかなか難しいようでした。施設の人たち以外との交流も少なく、日本人とのコミュニケーションの機会もほとんどないかもしれません。

これはある施設の話ですが、そこの施設長は、できるだけ地域との交流を増やそうと考え、地域の小学校での国際交流イベントやその他のコミュニティのイベントに、外国人職員を積極的に参加させようとしていました。また、親身になって外国人職員の生活相談に乗っていました。

もちろん、外国人介護職がみんな都会で暮らしたいと思っているとは限りません。出身地によっては、都会の方が暮らしやすいという人もいれば、自国のふるさとのような自然に囲まれた田舎暮らしが合っていると考える人もいます。しかし、いずれにしても自分とは合わない場所に赴任してしまった場合、精神的に疲れてしまうことがあるようです。

生活の場所に溶け込むためにどんなことをしたらよいか、外国人介護職本人だけでなく、周囲の人々みんなで工夫していく必要があると思います。

異なる学習環境

さらに、都会と地方では、日本語学習の環境にも大きな違いがあります。10年前はその違いはなかったのでしょうが、「介護の日本語」が認知されてきている今、都会と地方にその隔たりが出てきてしまいました。

現在、都会には「介護の日本語」に関する専門的な内容が学べる講座がいくつか開催されています。EPAで国家試験合格を目指す人たちにとっては、特に有意義な講座です。しかし、地方にはまだ、このような講座はありません。

アプリなどを使って自習するというシステムもぼちぼちできつつありますが、やはり、教師と対面で学ぶことの意義はまだまだ大きいようです。できるだけ早く、オンデマンドやe-Learningなどで、地方の人たちも同じように学習できる環境を整えるべきだと強く思っています。


HONUA

日本語教師。専門は日本語教育学。留学生、定住外国人、外国人介護従事者への日本語教育を行う。これまでに、EPA介護福祉士候補者、技能実習生、定住外国人に対する介護の専門日本語のコースデザイン、教材開発、教育実践に従事してきた。