学習支援の小さなアイディア(1)

リーフレット編:法制度や社会システムの学習

私は、EPA介護福祉士候補者対象の国家試験対策の授業を担当していたことがあります。その時に学習者からよく聞いたのが、「日本の法律や社会制度についての学習が難しい!」という声です。なぜ難しいのかと聞いてみると、

  • 「専門的な言葉がたくさんあって、大変」
  • 「日本の社会制度がよく分からない」
  • 「私の国には、このような法律や制度がありません」

ということです。

社会保障制度や、保険制度で扱われている言葉は難しいです。中でも介護保険制度、高齢者虐待防止法などは、実際の介護の仕事にも関わるものだと思いますが、特にそう感じます。言葉が難しい、文章が難しい、特に法律の文は難しい(支援者の視点から見ても、法律の文は長くて確かに読みにくいものです。)、今まで自分の国や地域で経験してきた社会構造と違う、など「難しい!」の背景には様々なことが関係しているようです。

それでは、法律や社会制度についての学習を支援したい時はどのような素材が教材として使えるでしょうか。

市町村のリーフレットを使ってみましょう!

ここでは、市町村のリーフレットを使った「高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)」の学習を紹介します。市町村のリーフレットは、市民へのお知らせという視点から、大事なキーワードを中心に書かれており、分かりやすいものが多いです。

日光市ウェブサイトの「高齢者虐待の防止」より


市町村が作成したリーフレットは、法律の目的や具体例について、比較的明確な日本語で書いてあることが多いです。また、最近では「やさしい日本語」を使っている自治体も増えてきています。これらのリーフレットを利用しながら、法律やその制度を理解するための言葉や内容の確認をします。ウェブの辞書サイトや機械翻訳などを利用しながら読むこともできます。

使用するリーフレットを選んだら、言葉や内容理解の問題を作成します。上のリーフレットから、問題例を作成してみました。読者のみなさんも、一緒に答えを考えてみてください。


問題:次の言葉はどういう意味ですか。

  1. 怒鳴る(どなる)
  2. ののしる

問題:次の文が正しかったら〇、違っていたら×を書きなさい。

  • 本人にお金を使ってもいいか確認しないで、年金を使うことは経済的虐待である。

この他にも、どんな問題ができるでしょうか。

また、学習者が働いている施設での虐待防止の取り組みや、もしも虐待を見つけたらどうすることになっているかなど、施設と関係づけ、学習者と話してみるのも1つの方法です。

「難しい!」ものは、簡単なものから少しずつ学習の支援ができればいいですね。


きょう

日本語教師。専門は日本語教育学。EPA介護福祉士候補者への訪日後日本語研修、介護福祉士国家試験のための専門日本語教育を行う。専門日本語教育では介護の専門家と連携しながら、ベトナム、フィリピン、インドネシアの候補者の日本語学習を支援する。留学生への日本語学習支援なども行う。